「チアリーディングって危険なスポーツでしょ?」
残念ながら、そんなイメージを持たれてしまうことがあります。
もちろん、スポーツですので、「日常にない動き」を鍛えるものだから、怪我のリスクがゼロということはありません。
でも、正しい知識と正しい環境づくりをしていけば、決して危険なスポーツではなく、チーム一体となって技を組み立ててていく、という特殊な過程を経験することで、他のスポーツにはないチームワークや仲間を思う気持ちが育つ素敵な競技だと思います。
今回はチアリーディングを安全に行うために重要なポイントを二つ紹介させていただきます。
プログレッションという考え方
日本の教育やスポーツにおいて「基礎が大事」という考え方は広く認知されていると思います。
土台となる「基礎」がないとその上に建つものは脆く崩れ落ちてしまう、という考え方は正しいです。
スポーツにおける「基礎」とは体力づくりや筋トレ、柔軟性などがあり、どんなスポーツでも、これらのトレーニングは必ず行うように練習は組まれていると思います。
でも、そこから実際に技にチャレンジする道筋がうまく組み立てられず、無理な練習をしてしまうことが多くある気がします。
「チャレンジしたい技」をいきなり練習し始めてうまくできないケースです。
こういった時に役に立つ考え方が、「PROGRESSION(プログレッション)」という考え方です。
「PROGRESSION」とは「段階を踏んで行う」ということです。
簡単な技から少しずつ難度を上げて練習をする進め方です。
チアリーディングの一番重要な要素であるスタンツ(組体操技)で言うと、
- まずは低い高さでやってみて少しずつ高さを上げていく
- まずは両足を持った状態でやってみてから片足にチャレンジする
- 支える人数を最大限増やしてやってみてから少しずつ人数を減らしていく
- 連続技のパーツを分解して一つ一つを練習してから少しずつつなげていく
というようなテクニックです。
言われてみれば当たり前のような気がしますが、意外とこのステップを踏まえて練習を進めていく、ということができていないことがあります。
そして、怪我が発生する時、こういう手順を踏まえていなかったことが原因であることがほとんどだったりします。
また、スタンツは特に「高さ」が出るテクニックなので、その「高さへの恐怖心をなくす」ということが安全に練習を進める上で最重要なポイントです。
「怖い」という気持ちでチャレンジすると、体に余計な力が入り、想定できない動きをすることが多いためです。
そして恐怖心をなくすためにも、このように細かいステップを踏まえていくことはとっても大事なことです。
スポッティングスキル
もう一つ安全性を高めるために重要なことは、スポッティングスキルです。
スポッティングスキルには二種類あります。
一つは、ベース(支える人)の力が足りない場合に補助をするスキルです。
特に新しい技にチャレンジする時は、この補助のスキルが必須になります。
指導者に一番求められるスキルとも言えます。
そして、もう一つは、失敗した際に落ちてくるトップ(上に乗る人)を安全にキャッチするスキルです。
落ちてくるトップに対して、手を出し体を寄せ、上半身を床に落とさないようにキャッチします。
本来、落ちてくるものに対して体を避ける、というのが人間の本能的な動きになりますので、この本能を「落ちてくるものに対して体を寄せる」という動きに書き換えるのは簡単なことではありません。
ですが、選手はこのスキルを備えないと、スキルアップはできませんし、怪我に繋がる可能性が高くなります。
目標ができ、演技を作っていく過程になると、チャレンジしたい技にばかりフォーカスが行ってしまいがちです。
しかし、新しい技にチャレンジする時こそ、基本の確認をしっかり行う習慣をつける、ということがとても大事です。
今回紹介したテクニックを適切に使うこと、そして、安全な練習環境が確保できているか、を常に意識して練習に取り組む、改めてその重要性について確認していきたいと思います。